ISU Comm. 1944:SOV、GOEガイドラインの改訂についての覚書
概要
先日、2015-16シーズンのルール改訂が発表された:ISU comm 1944: http://static.isu.org/media/207718/1944-sptc-sov-communication-2015-2016.pdf
それに対する簡単な解説と所感など:
- 「最終的にGOEマイナスになるエラー」廃止
- 4回転ジャンプ失敗するとより減点食らう(GOEマイナスの際の SOV 絶対値増大)
- ステップは厳格化・簡素化(簡単なターンはレベル要件から外れ、難しいターン・ステップに変更、Lv4には3連を異なる足で行う必要あり)
- スピンは若干緩和(基礎点微増、従前のV2でのダブルペナルティ廃止)
こちらも参照:http://sthmytkh.blog108.fc2.com/blog-entry-2531.html
所見:ジャンプの得点の微調整と、効果・意味の薄い規定を省くシンプル化のための変更が多く、全体的には緩和の方向の印象。2014-15 改訂から二年目のため大幅な変更はなし。ただしジャンプの回数制限など追加で ISU Comm が発行される可能性あり。
変更点
共通
- [明確化] V1/V2 から V/V1 に呼称変更
- [緩和] エラーに対するGOE マイナス:「最終的にマイナスとなるべきエラー」という概念が廃止。
所見:V1/V2 の名称変更の理由は不明だが、(推測として)現状 V1 があるのは Lz, F の2重のエラー(UR と e)のみだが、エッジエラー自体がなくなる(踏み切りでF/Lzを判断)可能性もあり、そうすると V の一段階のみなるため、か。
「最終的にマイナスとなる。。」に関しては、それが適用されるエラーはもともと重度(-2to-3 の引き下げ)のものであり、トータルでGOEゼロ以上がつく(プラス面で +2to+3 必要)可能性は低く、意味が薄いため廃止されたか。
ジャンプ
2A 以下は変化なし。
基礎点の変更
- [厳格化] 3A<: 6.0→5.9 (-0.1)
- [緩和] 3T: 4.1→4.3 (+0.2)
- [緩和] 3S: 4.3→4.4 (+0.1), 3S<: 3.0→3.1 (+0.1)
- [緩和] 4Fe<: 7.4→8.0 (+0.6)
- [緩和] 4Lze<: 8.2→8.4 (+0.2)
GOE係数(SOV)の変更
- [厳格化] 4A
- GOE-3: -3.6→-4.0 (-0.4)
- [厳格化] 4A以外の4回転
- GOE -1: SOV -1.0→-1.2 (-0.2)
- GOE -2: SOV -2.0→-2.4 (-0.4)
- GOE -3: SOV -3.0→-4.0 (-1.0)
- [厳格化] 4A
所見:4回転のGOEマイナス時の減点幅増大は妥当か。でもそれならプラス面もあげるべき?(リスクのみ増大)。トリプルのいくつかは微調整。4F,Lzの e< は、点数として単体では緩和だが、GOEもマイナスがつけられるだろうから、トータルでは厳格化か。
スピン
- [緩和] CoSp(LvB-2), CCoSp(LvB-4) の基礎点が微増
- [緩和] 従前のV2が廃止
- 以前は、フライングスピンで1)明確なジャンプ姿勢、2)着氷後の基本姿勢の形成・保持の要件の2つとも満たさなかった場合 V2 として二段階重いペナルティ(基礎点が約半分にカット)が与えられていたが、1段階のみに(一つだけでも両方満たさなくても減点幅は同じ)。
- [緩和] 足変えスピンで、それぞれの足で基本姿勢がないとV1 という規定が廃止
- [明確化] 「フライングスピンの」明確なジャンプおよび速やかな姿勢形成保持の要件に、「フライングエントランスからのスピン」も加えられた。
- [厳格化] 回転方向の異なるスピンにおいて、初めのスピンから出たあと “長いカーブ” を描いて次のパートに入ると、GOEで反映(事実上減点)される
- [緩和] レイバック:バックワーズ↔サイドウェイズの姿勢変化の際の最低回転数が3回転から2回転に減少
所感:スピンは結構な緩和。というより、前回の改訂でいろいろ規制いれてみたけど、あまり意味がないorやりすぎな部分を削った感じ。回転方向の異なる・・に関しては、宮原選手など用いる選手は厳しく見られるかも。
ステップ・シークエンス
- [統合・変更] ターン(スリー、ツイズル、ブラケット、ループ、カウンター、ロッカー)とステップ(トゥステップ、シャッセ、モホーク、チョクトー、チェンジエッジを使ったカーブ、クロスロール)をそれぞれ何個以上、という分け方によるレベル要件から、「難しいターン・ステップ(ロッカー、カウンター、ブラケット、ツイズル、ループ、チョクトウ)」を何個以上、と統合された。
- Minumu Variety (Lv1): ターン5個、ステップ2個 → 難しいターン・ステップ5個
- Simple Variety (Lv2): ターン7個、ステップ4個 → 難しいターン・ステップ7個
- Variety (Lv3): ターン9個、ステップ4個 → 難しいターン・ステップ9個
- Complexity (Lv4):異なる5種のターン(両方向)と3種のステップ(両方向) → 難しいターン・ステップ11個、うち5種は両方向
- [厳格化] Lv4 取得のためには、「3連続の難しいターンを2回」をそれぞれ異なる足で実施する必要あり
- [変更] GOEプラス要件の「十分に明確で正確」が「シークエンス中に多様なステップを使用」に変更
所見:簡単なターンやステップがカウントされなくなり、「難しい」ターン・ステップのみ対象となる、という文言のみを見ると「厳格化」の印象があるが、一定以上のレベルの選手ではもともと難しいターンは相応数組み込まれており、variety を満たすため「だけ」にステップ(ロール、シャッセ、モホークなど)を入れる必要がなくなることから、かえってシンプルに・無駄に長くならずに済む、という見方も。
ただ、Lv4取得に3連x2を異なる足でやる必要があるのは、厳格化か。まだちゃんと確認してないが、いずれも同じ足で踏んでいた演技もそれなりにありそう。
コレオ・シークエンス
- [明確化] エラーに対するGOEマイナス
- 「バランスを喪失したとき -1to-3」 が追加
- 「明確にシーケンスを表現しない -2to-3」が追加
所見:コレオはレベルがなくGOEのみで評価されるため、エラーの指針が追加された。従前も評価の対象となっていたとは思うが、明文化されることで明確に。