ステップ・シークエンスのレベル
概要
ステップ・シークエンス(スピンも)のレベルは、B(ase), 1, 2, 3, 4 の5段階で、定められた「レベル特徴」をいくつ獲得したかで決まり、テクニカルパネルによって認定されます。
よくテレビ実況などで「最高難度のLV4を獲得!」と言われますが、 これはあまり適切な表現とはいえず、 例えば体操競技の「ウルトラC」(古い)のようなそれ単体の技の難易度ではなく、要求をいくつきちんと実行したかによって決まるため、単体としての難度というより、確実性、多様性の指標とみるべきでしょう。
というのは、ステップに組み込まれるターン・ステップや動きそれ自体は特別に難しいものとは言えず、 例えば「難しいターン」とされているカウンターやロッカーであっても、 一定以上の選手であればそれ単体としては難なくこなすことが出来ます。 それらの多種なる組み合わせをプログラムの中で音楽の合わせて確実に実行するのが難しいのですね。
確実性
例えば選手自身はカウンターを行ったつもりでも、疲れや技量不足からきちんとターンを踏めずフラットあるいはチェンジエッジしてからのスリーと見なされると、カウンターとして認定されません。プログラム後半で疲れがでてくるとエッジが甘くなることが多いです。
多様性
簡単なターンやステップ(スリーやモホークなど)ばかりやっていてもレベルは増えません。得意な方向(CCWとか)ばかりやっててもそう。体もまっすぐなままやってても同じ。いろいろなフットワーク、体の動きが求められます。
レベル特徴
具体的なレベル特徴としては、以下の4つあります:
- 多様さ (Variety)
- 両方向への回転 (Rotation)
- 体の動き (Body Movement)
- 難しいターンの連続 (Difficult Turns)
基本的には、これらのうちいくつ認定されたかがステップのレベルになるのですが、「多様さ」による上限設定があるため、以下説明を加えます。
特徴1:多様さ
多様さとは、具体的にはターン、ステップの個数や種類の数です。 以下の4段階定められており、より高い「多様さ」を獲得するには、より多くのターンやステップを踏まなくてはなりません。
- 最低限に多様な(Minimum Variety):5つのターン、2つのステップ
- やや多様な(Simple Variety):7つのターン、2つのステップ
- 多様な(Variety):9つのターン、4つのステップ
- 複雑な(Complexity):5種類の異なるターン、3種類の異なるステップをそれぞれ両方向
この「多様さ」は高レベル獲得に多きく影響します。 各レベルを獲得するには、対応する「多様さ」を満たさなければならないからです。たとえば先の列挙でいえば、Lv1 を獲得するには、「最低限多様な」を満たさなければいけないし、Lv4 を取るには「複雑な」を満たす必要がある。
この「多様さ」の特徴は、各レベルを取得するための必要条件を定めたものといえます。 なお、「最低限に多様な」をも満たせないとレベルBとなり、逆にそれさえ満たせばLv1 は獲得できます。
それ以外の特徴2-4は比較的素直で、それらを満たしたと認定されれば、満たした特徴の数だけレベルが上がります。ただし先の「多様さ」の制限を受けます。例えば、2-4の特徴3つを満たしても、多様さが「2.やや多様な」だと、Lv2にとどまります。
*** 特徴2:両方向への回転
ハンドブックによれば
この特徴は、“スケーターが、リストにあるかないかにかかわらずあらゆるターンやステップで、シ
ークェンス全体の少なくとも 1/3 をある一方向に連続して回転し、次にシークェンス全体の少なく。。。
、、、えっと、理念としては、両方向ともきちんと回転しなさい、と。シークエンス全体のうち、連続してもしてなくても、左回りに1/3、右回りに 1/3 は回転しなさい、と。たとえばCCW(左回り)が得意だからってそっちばっかやっててもダメよ、と。
「体の回転」としては、ちゃんと一回転しなさい、ターンでフォアバック変えるだけじゃだめよ、とありますが、単にスリーターンで向きかえてツー、しばらくしてターンしてツーじゃダメ。
また「(連続ではなくても)」という文言が入ってますが、これは、ステップはじめて最初の1/3はずっと左回り、そしたら次の1/3は右回り、とした場合は「連続して」となるけど、 そうではなくて、例えばシャッセで進んでCCWスリーからツイズル、トゥステップなどである程度左回りの回転をこなして、チェンジエッジから今度は逆にロッカー、フロントクロスからトゥステップ、ループなどと左回りにして、また今度は右回りで、、としてもいいよ、と。
それぞれ全体量として、各1/3に達していると判断されれば、「両方向への回転」の特徴が獲得できることになります。
特徴3:体の動き
昨シーズンまでは「上体(upper body)」でしたが、今季から body に変更され、お尻と両足が追加されました。
動きとして、「体幹のバランスに影響を与えること」が求められており、軸を保ったままの回転ではなく、大きく仰け反ったり、屈んだり、コントロールが難しくなるような動きが求められます。
これも全体の1/3以上。結構これではじかれてるケースも多いんじゃないでしょうか。
特徴4:難しいターンの連続を2つ
俗にいうディフィカルト3連。これを見極められれば通を気取れます(?)。
難しいターンはブラケット、ロッカー、カウンターとツイズル、ループ。これらを3つ連続して、かつ明確なリズムを刻んで行わなければなりません。これは結構難しいけど、音楽に乗って深くそれでいて軽々と踏まれると昇天しかねない。
この3連を2つ行いかつ認定されれば特徴獲得されます。但し全く同じ足、エッジ、順序でやると同一と見做されてしまいます。
あくまで私の認識できる範囲ですが、ロッカーから始めるケース、またツイズルやループで終わるケースが多いと思います。ロッカーブラケットカウンターとかロッカーカウンターツイズルとか。 ロッカーは体の撚る方向とエッジを返す方向が同じで比較的勢いがつけやすく、ツイズルやループは逆にそこからつなげるのがやりにくいからでしょうか。とはいえばカウンターやツイズルから入るケースもありますが。
これも、本人はやってるつもりでもエッジが甘かったりリズムにちゃんと乗ってないと弾かれたりすることが多いようですね。見てて、ん?って思うのは、カウンターがフラットかチェンジエッジスリーになってるケース、最後のターンの出ですぐ足を着いちゃうケース。
まとめ
、、と長々と書いてしまいましたが、1)多様さ、2)両方向の回転、3)体の動き、4)ディフィカルト3連の各特徴の認定された数の合計がそのステップのレベル、但し「多様性による制限」あり、と。 数式的に書くと、
LV = min(V, sum(i) { FTi })
where:
V = {1, 2, 3, 4} # Variety
FTi = {1 if feature i satisfied, 0 if not} #FeaTure
かな?
おまけ
トップ選手でも、スピンはLv4は比較的取れても、ステップはなかなかLv4は取れてないですね。構成としてはLv4にしてるはずですが、後半に来ることが多いステップのその後半は、さすがに甘くなることが多いようです。
また、ジュニアやそこまでトップではない場合、そもそもLv4構成にすること自体難しいようです。steps, なかでも5種類のターンを両方向ってのが厳しいのでしょうか。スリー以外の「難しいターン」5つすべてを両方向に入れてかつ実行しなければいけない。言うほど簡単